【論文紹介】ロードバイクにウエイトトレーニングは効果があるのか?

トレーニング
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著者紹介
大前 翔

コーヒー好きな医学生兼プロロードレーサー。愛三工業レーシングチーム、慶應義塾大学医学部所属。スポーツドクターになるために医学部に進学したが、国内プロになる機会をいただき、休学してプロ修行中。「目標」に向かってペダルを回す人を応援するべく、このサイトを作りました。趣味ブログやレース情報はホームページの方で書いています。

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「ロードバイクのトレーニングにウエイトは必要なのか?」

という点については昔から議論されてきました。

結論から言うと、筆者は「必要」と考えているのですが、

自転車の上で使う筋肉は自転車の上でしか鍛えられない。オフバイクで余計な筋肉をつけたら重くなる。

こういう理由で、自転車の上でしかトレーニングをしないという選手が依然として多いのも事実です。

ある人が「必要だよ」と言っていても、

それなら証拠を出せ!

という感じで、証拠を突きつけられないと事実として考えづらい方もいるでしょう。

今回はまず、ウエイトトレーニングが「要る派」と「要らない派」の言い分を整理して、その後「ロードバイクのトレーニングにウエイトが必要」と示唆している論文をひとつご紹介します。

「ロードバイクにウエイトトレーニングは要らない」派の言い分

こちらの派閥で最も踏み込んだ解説をしているのはこのサイトに何度も登場している『パワートレーニングバイブル』でしょう。

この本のp.181からp.187で、ウエイトトレーニングについて4分割分析のデータをもとに以下のように説明されています。(以下要約)

スタンディングスタートから、10回分の全力走のデータを、4分割分析(ペダル速度とペダル踏力の関係を見るグラフ)でプロットしました。

『パワー・トレーニング・バイブル』p.182

こうすると理論上この選手が出せる最大のペダル踏力を推定できて、それはペダル速度が0のときのペダル踏力、すなわちこのグラフのy切片になります。

この選手の場合、最大踏力は1100Nまたは110kgfと推定されましたが、レースのスプリント中に記録された最大トルクは600N、平均すると400Nで、筋力の最大値の半分以下でした。

レース中に全力でペダルを踏んでいると感じても、実際にはそのケイデンスで出せる最大パワーよりも低いパワーしか出せていないことがほとんどです。

最大パワーをレース中に出せない原因は、短期と長期の疲労であり、だからこそ無酸素・有酸素の両面でトレーニングしてATPの生成能力を高める必要があります。

ウエイトトレーニングをすると筋収縮の最大速度が低下し、高速で筋収縮するときの最大パワーが低下します。

十分な根拠もなしに「筋力トレーニングが自転車に役立った」と鵜呑みにしてはいけません。

確かに、トラック競技のスプリント予選で200mのスプリントを行う際にも、90rpmで10秒かかるとしても15回はペダルを踏んでいるわけです。

15回反復できる運動が最大筋力下で行われないであろうことは容易に想像できます。

しかしだからといって、最大筋力を引き上げるトレーニングがスプリント能力向上に役立たないと果たして言い切れるでしょうか?

最大筋力を引き上げれば、従来のスプリントで発揮していた筋力レベルが主観的に低下するので、反復回数を増やせるのではないでしょうか?

ということで「ウエイトトレーニング要る派」の言い分を聞きましょう。

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「ロードバイクにウエイトトレーニングは必要」派の言い分

最近、元全日本タイムトライアルチャンピオンの西薗良太さんが監訳した『サイクリストのためのストレングスとコンディショニング』が発売されました。

この本自体がまるごと、「自転車に乗るために必要な身体のモビリティをアップさせ、最終的にオフバイクで行う筋トレを効果的に行う」ことに主眼が置かれています。

オリンピックの団体追い抜きで世界新記録を出し金メダルを獲得したイギリスチームの理学療法士が執筆した内容で、イギリスチームの強化戦略にストレングストレーニングは欠かせなかったといった内容が書かれています。

その中で気になったのが、p.23のコラム「筋肉がつきすぎて登りが苦手になるのでは?」です。(以下要約)

ストレングストレーニングは、筋力の最大値に到達するまでの速さを高めることを最大の目標としています。

たとえ本人が望んでも、筋肉量を大きく増やすのは簡単ではなく、質量そのものが増えなくても筋肉は確実に強化されます。

2010年にロンネスタッドが行った実験では、トップ選手が体重を増やすことなく、大腿筋の断面積だけを増加させたという結果が出ています。

つまり、ウエイトトレーニングをすると、筋肉量が増えなくても筋力は向上し、選手のパフォーマンスアップにつながるという論調です。

これについては別記事にしましたので、興味のある方はご覧ください。

筆者としてはこのコラムよりも、コラムで紹介されていた論文のほうが気になったので、元を参照してみました。

シーズン中のウエイトトレーニングがロードバイクのトップ選手のパフォーマンスを向上させるという実験結果

12人のトップレベルのサイクリストを6人ずつに分けます。

  • E+S(Endurance, Strength)群: 12週間、週に2回のペースでウエイトトレーニングを行い(準備期間)、続く13週間は週に1回のペースでウエイトトレーニングを行った(オンシーズン)。この間通常のエンデュランストレーニングは引き続き行った。
  • E(Endurance)群: 通常のエンデュランストレーニングのみを行った。

結果

  • E+S群では、大腿筋断面積の増加、1RMの上昇(ハーフスクワットの最大負荷の事)が見られた。
  • E+S群において、大腿筋断面積とストレングスは、オンシーズンに準備期間よりも上昇した。(つまり準備期間を経ていれば週に1回のウエイトトレーニングでも効果が得られる)
  • E+S群では無酸素パワー、乳酸閾値パワー、有酸素パワーの全てが上昇した。対してE群ではこれらの変化は見られなかった。

結論

よく鍛えられたサイクリストであっても、ウエイトトレーニングはパフォーマンスに関わる指標を向上させる。これはレースシーズン中のストレングスメンテナンストレーニング(週に1度のウエイトトレーニング)においても言える

結局、ロードバイクにウエイトトレーニングは必要か?

ウエイトトレーニング賛成派、反対派のそれぞれの意見を参照して、論文も紹介してきました。

反対派にも、「ウエイトトレーニングがサイクリストのパフォーマンスを向上させなかった」という論文がベースにあるようです。

しかし、筆者はロードバイクトレーニングにおいてウエイトは、「行えるなら行ったほうが良い」と考えています。

この話題に限らず言えることですが、事象を否定することは、肯定することよりも遥かに難しいのです。

ウエイトトレーニングがパフォーマンスを向上させるという事象が一つでもあれば、少なくとも「パフォーマンスを向上させるウエイトトレーニングのやり方が存在する」と考えるべきでしょう。

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ウエイトトレーニングができなくても、コンディショニングは行ったほうが良い

重りを持ち上げる類の一連のトレーニングを、昔は「ウエイトトレーニング」と呼んでいましたが、最近では、理学療法士さんなどによって、「ストレングス&コンディショニング」という概念が浸透してきました。

闇雲に重りを持ち上げるのではなく、関節や筋肉の可動域を担保した上で、それらのコントロール能力を身に着け、そこで初めて重りを持ち上げる、すなわち「正しい方法でウエイトを行うべき」という考え方が浸透してきたのです。

重りを持ち上げるウエイトトレーニングを行えなくても、関節可動域の改善や、連動のコントロール能力の改善は、自転車の上でとても役に立ちます。

西薗良太氏が監訳された『サイクリストのためのストレングスとコンディショニング』には、「正しくウエイトトレーニングを行うためのノウハウ」が網羅されています。

筆者も現在この本に則って、関節可動域の改善とコントロール能力の向上を日常的に行っています

興味があれば読んでみてください。

具体的にどんなトレーニングを行えば良いのかや、時間がないときにウエイトトレーニングと自転車でのトレーニングのどちらを優先するべきかなど、今後記事を追加していく予定なのでご期待ください。

筆者がトレーニングについて書いたその他の記事

それではまた!

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