【再検討】体重を使ってロードバイクに乗るのは本当に”ラク”か?

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著者紹介
大前 翔

コーヒー好きな医学生兼プロロードレーサー。愛三工業レーシングチーム、慶應義塾大学医学部所属。スポーツドクターになるために医学部に進学したが、国内プロになる機会をいただき、休学してプロ修行中。「目標」に向かってペダルを回す人を応援するべく、このサイトを作りました。趣味ブログやレース情報はホームページの方で書いています。

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このサイトの一番最初の記事として、こんな記事を書きました。

しかし、これについて有識者の方から数々のご指摘をいただきました。

具体的には、宇宙物理学者でサイクリストでもあるnupuriさんがこんなアンサー記事を書いてくださったり、

ロードバイクアカデミーのツイッターアカウントに、元全日本タイムトライアルチャンピオンで、東大工学部出身の西薗良太さんからダイレクトメッセージをいただいたりしました。

内容を要約すると、

西薗さん
西薗さん

そもそも、体重を利用することはつまり位置エネルギーを利用することであり、位置エネルギーは解放するたびに補給しなくてはならない。つまり、位置エネルギーを600wの仕事率で解放するために、身体が600w仕事しているのであり、体重”だけ”で600w出せるというのはミスリードだ

という内容でした。

これらの内容を読んで確かに読者をミスリードしている表現があったと思い、「体重をペダルに伝える」という点について再検討してみたいと思います。

「体重を使ってロードバイクに乗るのが効率的」なのはあくまで「直感」

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筆者の当初考えていたこととしては、

ロードバイクに乗るときに体重を全部活用すれば、体重を常にペダルに加え続けるための姿勢維持や、体重移動のための筋力は必要になるけれど、ロードバイクを一定距離進ませるための筋力を最小化できる

ということでした。

なぜなら、ハンドルやサドルに、推進力にならない余計な荷重をかけなくて済み、それらをペダルに乗せられるからです。これは一見筋が通っているように思います。

しかし、これはあくまで「見かけ上」の話であり、自転車を進ませるために必要な、筋肉のコンセントリック収縮についてしか、考えていなかったのです。

(コンセントリック、エキセントリック、というのは筋肉の収縮の種類のことで、筆者の方で説明すると長くなるのでわからない方はこちらに飛んでください。)

姿勢維持や体重移動に当たっては、体幹部の筋肉や四肢の付け根の筋肉、いわゆるインナーマッスルを必要とします。

しかし、インナーマッスルが収縮しているとき、四肢のアウターマッスルのように、ダイナミック(日常用法でなく、学問的に言う”動的”ということ)に身体が動くでしょうか?

答えはノーです。インナーマッスルは身体を安定させるためにあるのですから、あくまで見かけはスタティック(静的)です。

では、インナーマッスルを使って身体を安定させているとき、あなたは寝ているときと同じ心拍数のままでいられるでしょうか?疲労感を感じずに10時間、身体を安定させていられるでしょうか?

こちらも答えはノーです。

体重を乗せながら、下肢の筋肉がコンセントリック収縮をしてペダルを回す。その背景には、体幹部のアイソメトリック収縮や、場合によっては下肢筋を安定させるためのエキセントリック収縮が隠れており、これを見過ごしてはいけなかったのです。

まとめると、「体重による位置エネルギーを使い、失われた分は筋力で補給しながらペダルを回す」という計算で、10w/kg出せることは間違いないけれども、逆に言えば身体は10w/kg出す必要があります

そして体重を利用して10w/kgを出力するという手段が(本当に実現できるかは置いておいて)、果たして本当にメタボリックコスト(人間が運動するときにどれだけ頑張るか?という指標)を最小化しているか?という点については、ブラックボックスなわけです。

では、体重を使ってロードバイクに乗ることが効率的ではないのか?

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では、体重を使ってロードバイクに乗ることは、効率的ではないのでしょうか?

これについて筆者は、科学的には「わからない」けれども、選手としての経験値から言って「違う」と答えます。

なぜなら、バランスボールなどの類の体幹トレーニングをした後、明らかに筆者は「ペダリングが研ぎ澄まされた」と感じるからです。スケート、スノーボードなどの体重移動が求められるスポーツをした後も同様でした。

科学的にこれを証明しようと思ったら、nupuriさんがおっしゃるように、もっと動的なモデルを作ってシミュレーションするとか、
「身体と自転車の接点となるハンドル、サドル、ペダルに体重計でもつけて、体重を使ったペダリングを定義づけ、それによってメタボリックコストが有意に低下するか」、
などの研究を行う必要があるでしょう。

しかし、筆者の感覚値のなかで「体重を利用したペダリングが最も効率的である」という点については、論文の裏付けがあるかのように確からしく感じていたので、前の記事では科学的に筋の通らないミスリードをしてしまいました。申し訳ありませんでした。

しかし、まさしく今言ったように、筆者の中では、「『体重を利用したペダリングが最も効率的である』という点については、科学的ではないけれども、あたかも論文の裏付けがあるかのように確からしい」と感じています。この点については変わらないので強調させていただきます。

Special Thanks to Nupuriさん、西薗さん

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最後に筆者にこの気づきを与えてくださったnupuriさんと西薗さんに感謝申し上げます。

筆者も日々勉強なので、「科学」とは何たるかについてこの検討で深く考えさせられました

加えて読者の方々も、これからの記事、論理的におかしな点を見つけましたら、忌憚なくご指摘をいただければ幸いです。

ダイレクトメッセージをくださった西薗良太さんのpodcast “side by side radio”のページ

西薗さんが監訳された本↓

題材に取り上げてくださったnupuriさんのnote↓

それではまた。

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コメント

  1. Mikitake より:

    こんばんは。同業でだいぶじーさんです。単純化するために片足ペダリングで考えてみます。仮にペダルに全ての荷重をかけられれば、ふみ足部分では筋力を使わず、ひきあし部分での脚の引き上げにのみ筋力を使うことになります。一方でペダルに全く荷重できずに筋力だけでペダルを回す人は、ふみ足で筋力を使うのに加え、ひきあしでも筋力を使う。(いずれにしても足は引き上げる必要はある)では、重力による足を引き下げる力はどこに行ってしまったか?
    これは、ハンドルとサドルで身体を支える力に使われたことになるのかな?(反作用として)。言い換えれば、(僅かではありますが)ハンドルやサドルを弾ませる力に使われる。
    一方で
    サドルに全荷重を乗せるためには、体幹の保持が必要になるため、
    その部分のエネルギーコストは必要になると思います。ここのエネルギーコストの計算はどうするのかはわかりませんが、経験的にはサドルに荷重を乗せたほうがベターかな。より大きな筋を動員できて、金持久力的にも有利と思われます。

    • 大前 翔大前 翔 より:

      返信が遅くなり申し訳ありません。
      コメントありがとうございます。
      まさに仰る通りです。
      直感的にわかることを、科学的に証明できたら面白いですよね。
      将来的に検証してみたいところです。

  2. Mikitake より:

    返信ありがとうございます。同業(だいぶじーさんですが)であるのもあり応援しています!復学後も頑張って!

  3. Mikitake より:

    あ、誤字多くてすみません。

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