筆者が先週出場した、JBCF東日本ロードクラシックは、3日間連続でレースが行われました。
そこで、day2とday3では、筆者のいた集団がどちらもゴールスプリントになった(day3は3位争いの集団ではありましたが…)のですが、その2つのゴールスプリントのデータの違いが特徴的でした。
それらが、ひとくちにゴールスプリントといっても、求められる能力は一つではない、ということをよく示していると思ったので、紹介します。
東日本ロードクラシックのレースレポートは以下をご覧ください。
Day2とDay3のゴールスプリントの違いを言葉で説明すると
Day2のスプリントは、大集団でのゴールスプリントで、宇都宮ブリッツェンがトレインを組んでハイスピードでけん引して、ゴールまで高速で流れ込むようなスプリントになりました。
一方でDay3のスプリントは、各チームアシスト選手がおらず、お互いに単騎のスプリントだったので、最後の心臓破りの坂でアタックがかかったあと、一旦スローペースで見合ってから一気にギアをかける、いわば加速勝負のスプリントになりました。
それらをパワーデータでみると具体的にどのように違ってくるのか、データを見てみましょう。
心臓破りの麓からゴールスプリントまでのパワーデータ
こちらがDay2
こちらがDay3
これでは見づらいと思うので表にしてみます。
時間 | 平均パワー | NP | 最大パワー | VI | |
day2 | 2:31 | 418w | 424w | 1017w | 1.01 |
day3 | 3:14 | 324w | 358w | 1359w | 1.10 |
注目したいのはVI(Variability Index, ばらつき指数)で、この数字が大きくなるほどパワーの変動が大きかったことを示します。
day2は1.01と、最後の展開をほぼ一定のパワーで踏んでいるのに対し、day3は1.10と、踏んだりやめたりのばらつきが大きいです。
先ほども述べた通り、day2はブリッツェンの牽引で、ペースが緩むことなくゴールに流れこんだのに対し、day3は心臓破りでアタックがかかり前に2人逃がしてしまった後、一旦見合ってからスプリントし直したことがデータでもよくわかります。
ゴールスプリントのみでのパワーデータ比較
続いて、心臓破りの展開は無視して、最後のホームストレートでギアをかけたスプリントのみ抽出してみます。
こちらがday2
時間 | 平均パワー | NP | 最大パワー | |
day2 | 0:31 | 605w | 594w | 1017w |
day3 | 0:12 | 1075w | – | 1359w |
day2のスプリントは、岡本選手の発射台を担っていたこともあって、早めにスプリントを始めたのですが、そうでなくても、ブリッツェンのトレインをまくるためにはこれくらいのタイミングで仕掛けてロングスプリントする必要があったと思います(結果はまくれず4位でしたが)。
長い時間をかけて加速しようとしたこと、スプリント中に岡本選手の位置を振り返って確認したこと、他選手との接触があり踏みやめたことなどの要因はありますが、
一番は、ブリッツェンのスプリントに至るまでの高速での牽引によって脚が削られていたことで、1017wというキレのない加速しかできず、平均パワーも伸び悩んで敗北したと考えられます。
一方でday3のスプリントは、day2の2倍以上の距離を走った後のスプリントにも関わらず、最大パワーや平均パワーを見てもわかるように、明らかにキレの良いスプリントをしています。
結果は周りにスプリンターがいなかったことも影響していますが、この集団の頭をとって3位でした。
「ゴールスプリント」にも、求められる能力値はいろいろ。
今回紹介した2つのスプリントは、「トレイン合戦の高速スプリント」か、「個の力で加速勝負になるスプリント」か、という違いがあります。
前者では、ゴール前の2,3分での高強度の中でも脚にゆとりを持たせ、最後に加速する力を残しておくための高い無酸素運動容量(Z6)が求められます。
一方後者は、それまでの展開での脚の消耗を除けば、純粋な10秒、20秒といった神経筋パワー(Z7)が求められます。
アマチュアレースにおいても、ゴール前にスプリンターでない選手が多く混ざっており、スプリントに持ち込みたくない選手がゴール前でアタック合戦を仕掛けるような展開では、前者のような能力が求められるでしょう。
一方でスプリント力が拮抗していて、みんながスプリントでの決着を望んでいるような展開では後者が求められます。
自分の脚質を「スプリンター」と分析している方は、どちらの展開でも勝てるように備えておくと、リザルトが変わってくるかもしれないな、という話でした。
それではまた!
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