乳酸値でわかること
ランニングやサイクリングをやる人なら、一度は「乳酸」について耳にしたことがあると思います。
乳酸は激しい運動をした結果、血液中で増加してくるので、血中の乳酸濃度を測定することで、有酸素運動と無酸素運動の境目を把握して、有酸素運動能力を伸ばすためのトレーニング強度を決めるために使われています。
今までは血液からしか測れなかった乳酸値が、汗から測れたなら…
そんな面白いデバイスがあるので、紹介します。
これまでの乳酸測定: 血中乳酸
これまでの乳酸測定では、運動中に指先や耳たぶから採血するしかありませんでした。
血液から直接乳酸濃度を測れるのは良い点です。しかし、細い針を身体に刺すので侵襲性が高く、運動中の測定もしづらく、連続測定ができないため、リアルタイムでの変化が追いづらい、というデメリットがあります。
汗乳酸センサーとは?
汗の中の乳酸を感知するチップを肌に貼り付け、乳酸濃度の変化を測定するデバイスです。ごくわずかな汗量で測定できるので、ウォーミングアップをして軽く汗ばむくらいでも測定可能でした。
センサーデバイス(右)に、汗を感知するチップを挿入して使用します。
肌に直接チップを貼り付けます。
ベルトで上腕部にデバイスを装着します。
特徴
採血と違い、痛みを伴わない点と、連続的に測定でき、外でのトレーニングでも測定ができる点が良いと感じました。スポーツでの採血を専門家ではない人が行うことを禁止するガイドラインが出てきていることもあり、血液を使わない点は良いですね。
こちらは僕が実際に汗乳酸センサーを装着して3時間のトレーニングをした際の汗乳酸データです。
この日はウォーミングアップ後、10分の一定走、40/20のショートインターバルを10回、ランプアップ、練習終わりに6秒スプリントを2回行いました。パワーを上げるのに呼応して、汗乳酸値が上昇していることが見て取れます。
運動中の乳酸値の推移が可視化されることで、心拍数やパワー値よりもより直接的に、体へのトレーニング負荷を測定できるようになる可能性があると感じます。
汗乳酸測定の将来性
汗乳酸測定は汗中の乳酸濃度の変化を表示し、毎秒単位の連続モニタリングが可能となります。乳酸値を連続的に測る事自体が、最先端の取り組みであるため、データの解釈の仕方はまだまだ研究途上です。しかし、
・有酸素運動能力を測る
・体調や、追い込み具合によって有酸素運動能力がどれくらい変化するのか知る
・トレーニングメニュー立案の参考にする
といった使い方ができそうです。僕もパワートレーニングコーチとして、選手として使用を続け、汗乳酸測定のトレーニングへの応用の仕方を追求していきたいと思います。
注記
今回紹介した汗乳酸センサーは、株式会社グレースイメージングが提供しています。