パワーメーター使ってるよ!走ってるときにパワーとか消費カロリーとか見れて便利だよね!
パワートレーニングはやってます。レースに向けてCTLとかATLとか管理してます。
ソフトウエアで勝手に自分のパワープロフィールを作成してくれるので、自分の弱点を把握するのに使ってるよ。
パワートレーニングを行っている人は、大体口をそろえてこんなことを言うと思います。
そんな人に問いたいです。
「本当にパワートレーニングができていますか?」
パワーメーターを使うと、本当にいろいろなことが分かります。今回は、それについて話していくのですが、
「本当の意味でのパワートレーニング」
(ここでは、パワーメーターのポテンシャルを最大限引き出して、得られるデータを全部使って分析しトレーニングに生かすこと、とでもしましょう)
ができている人は、国内のプロ選手でもほんのひとにぎりだと感じます。
パワートレーニングをしていると自覚している人の多くは、
- アプリやソフトウエアが作成してくれる自分のパワープロフィールを見て、自分の弱点を把握する
- 練習やレースでパワーメーターを見ながら走ることで、最適なペーシングや練習強度の調整に役立てる
- CTLやATL、TSBといった数字を見ながら、レースにむけてピーキングを行う
これらのことはおそらくやっていると思います。
もちろん、これらもパワーメーターを活用する絶大なメリットなのですが、パワートレーニングが普及してきた2020年現在、真剣にレース活動に取り組むサイクリストは、これらのことは当たり前にやっていると考えた方が良いでしょう。
日本企業であるパイオニア社がパワーメーターを発売した2013年以降、パイオニア社の優れたソフトウエア開発によって、上に述べた3点は、パワーメーターさえついていれば、ソフトウエア上で誰もが把握できる身近なデータになりました。
しかしこれからの時代、ライバルとの差別化をはかるならその先です。
パワーメーターには、今挙げた3点のみならず、もっとレースで良い成績を出すために使えるデータが詰まっています。
今回の記事では、そんな「これから活用したい、パワーメーターのデータ活用術」を2つご紹介します。
ロードバイクのパワートレーニングの本当の効果
今回書く内容は、ハンターアレン、アンドリューコーガン博士共著『パワー・トレーニング・バイブル』に準拠致します。
全くの忖度なしに、「この本なしにはパワートレーニングはできない」というくらい、この本にはパワートレーニングの基礎の全てが書かれています。
これから紹介する方法についても、すべてを記載していると、この本の丸写しになってしまうので、あくまで「方法や用語」の紹介に留めます。最終的にはこの本に記載されているデータに当てはめないと、トレーニングに活用できないこともあるので、まだ持っていない人は、ぜひ購入されることをおすすめします。
一段上を行くパワーデータ活用術①: 疲労プロフィール
おそらく、パワートレーニングを行っている人は、
「自分のパワープロフィール」
を作成したことがあるかと思います。
それを客観的に評価するために、『パワー・トレーニング・バイブル』p86の「パワープロフィール一覧表」と照らし合わせ、一喜一憂し、
自分の弱点を把握したので練習に生かそう、と思ったはずです。
しかし、弱点把握という意味ではそれだけでは不十分です。
疲労プロフィールを確認すれば、「自分の得意な分野の中でも、強化すべき点はどこか」や、「自分が苦手な分野がそもそも苦手な原因は何なのか」などを知ることができます。
疲労プロフィールというのは、
「トレーニングのレベル4~7のそれぞれについて、より細かく時間ごとの最大パワーを測定したときの、パワーの落ち幅」
を言います。
例えば、スプリンターとはレベル7(神経筋パワー)の出力が優れている選手のことを言いますが、スプリンターがさらに強くなりたいと思ったとき、自分のスプリントの弱点、を探ることが必要になりますよね。
そんな時、レベル7をさらに細かく分類して考え、5秒、10秒、20秒それぞれの最大持続パワーを測定し、時間を延ばすごとにパワーがどれだけ低下していくかを見ます。
これは筆者が利用しているTraining Peaksというアプリの有料版で表示することができるグラフですが、筆者の実際のレベル7の疲労プロフィールが以下です。
このグラフでは、5秒、10秒、20秒のスプリントパワーを時系列でそれぞれ上位のデータを5つずつ、プロットしています。一番上が5秒、真ん中が10秒、下が20秒ですね。
グラフを見ると、5秒から10秒のパワーの落ち幅が小さいのに対し、10秒から20秒にかけては落ち幅が大きいことが分かりますね。
これを、ジテトレさんがアップしてくれている疲労プロフィール作成用のExcelシートに記入して照らし合わせると、自分の疲労抵抗性がどれくらい周りに比べて優れているのかわかります。
実際に筆者の過去1年の疲労プロフィールを評価すると以下のようになります。
ここから筆者のスプリントの疲労抵抗力は高く、どちらかというとロングスプリントが得意で、短所を伸ばすなら5秒の時間帯を伸ばしていくと良い、もしくは、もっとロングスプリントで飛びぬけるため、長所を伸ばすために、20秒のスプリントを鍛えると良いことが分かります。
このグラフを他のL6,L5,L4でも作成し、時間帯ごとの疲労抵抗性を分析していきます。
L6なら30秒、1分、2分で比較
L5なら3分、5分、8分で比較
L4なら20分、60分、90分(60分と90分で有効なデータがない場合はレースのNPなどを使う)
のが良いと思います。
使っているアプリケーションに作成機能がない場合は、アナログでグラフを作成しても良いと思うので、是非一度やってみてください。
一段上を行くパワーデータ活用術②: PMCの活用
PMCとは、パフォーマンス・マネジメント・チャート(Performance Management Chart)のことを言います。
PMCを活用すると、
自分がベストパワーを出せる時のトレーニングには、いったいどんな特徴があるのか?
を分析することができます。
筆者が使用しているアプリの、Training Peaks有料版や、WKO5というソフトウエアで表示することができます。
どんなものかというと、実例を見せた方が早いと思うので、筆者のPMCを見せます。
これは、筆者の過去28日間のPMCで、表示しているのは、
- CTL(青いライン)
- TSB(黄色いライン)
- 20分のベストパワートップ10(紫のライン)
になります。
このグラフを見れば、「20分で自分が良いパフォーマンスをしているときのCTLとTSB、とTSBの推移の仕方」が分かります。
例えば、上のグラフでは20分のパフォーマンスがとびぬけている点が3つありますね。
その時のCTL、TSBを見ると、以下のことが分かります。
- 3点のうち2点はTSBがプラスの時に出ている
- 3点のうち2点はTSBが増加傾向(つまり回復傾向)にあるときに出ている
- この3点でいうと最も数値が良かった時はCTLが最も高かった時だった
これらから、このグラフからは、20分のベストパワーは、CTLがある程度高く、TSBがプラスで、かつTSBが上昇傾向にあるときに出やすいと読み取れます。
今回は簡略化のため、28日間の統計をつかったため、サンプル数が不足していて、これが筆者の特徴とは言い切れないと思いますが、
例えばこれを直近1年間のデータを使ってやれば、自分が良いパフォーマンスを出せていた時の練習の特徴を把握し、レースでベストパフォーマンスを出すためのトレーニングプラン作成に役立てられるわけです。
ちなみに、先ほど述べた傾向は、大まかに全員について言えることですが、具体的な数字を細かく見ていくと、人によって違ってきます。
ただレースの時に、TSBがプラスになるようにピーキングするよりも、もっと自分に合ったピーキングができるわけです。
是非活用してください。
まとめ: これらを有効活用して、ロードバイクのパワートレーニングの効果をブーストさせよう
本当は、4分割分析についても触れたかったのですが、これについては話すことが山ほどあるので別記事にしようと思います。
今回は、パワートレーニングをレベルアップする方法を2つ、疲労プロフィールと、PMCの活用についてご紹介しました。
もっと具体的な活用方法に関しては、『パワー・トレーニング・バイブル』という本に記載されていますので、まだ持っていない方は購入してみてください。
もう持っている方は、復習してみてくださいね。
また、もっと基本的なパワートレーニングでやるべきことや、おすすめの管理アプリなども記事にしていますので、興味があればご覧ください。
それではまた。