【ロードバイク乗りは知るべき】筋トレで体重を増やさないでパフォーマンスを向上させた実験結果

トレーニング
この記事は約9分で読めます。
スポンサーリンク
著者紹介
大前 翔

コーヒー好きな医学生兼プロロードレーサー。愛三工業レーシングチーム、慶應義塾大学医学部所属。スポーツドクターになるために医学部に進学したが、国内プロになる機会をいただき、休学してプロ修行中。「目標」に向かってペダルを回す人を応援するべく、このサイトを作りました。趣味ブログやレース情報はホームページの方で書いています。

筆者の最新情報をチェックする

みなさんこんにちは。

こちらの記事で、「ロードバイクのトレーニングでウエイトは行えるなら行った方が良い」と結論付けました。

しかし、自転車ロードレースやマラソンなど、体重が増えることが重りになるスポーツをやっている人なら、

ウエイトトレーニングで体重が増えたら嫌だな…

と誰もが思うことでしょう。(体重や筋肉量を増やすトレーニングをお求めの方は、ほかの記事をご参照ください)

体重を増やすことなく、効率よく「パワーウエイトレシオ」を向上させたいですよね。

実は上記の記事中で参照した文献から、「筋肉量が増えなくても筋力は向上し、パフォーマンスアップにつながる」という要約をしたのですが、その時ソースとなる論文を見つけられなかったのです。

上記記事中で参照した文献はこちら↓

元全日本タイムトライアルチャンピオンの西薗良太氏が監訳した、ストレングストレーニングを正しく行い強くなるためのメソッドを総まとめしてある本です。筆者も現在熟読してトレーニングに励んでいるので、興味があればご購入ください。

今回、この文献中の「筋肉量が増えなくても筋力は向上し、パフォーマンスアップにつながる」という記述のソースとなる論文を見つけたのでご紹介します。

論文『成人クロスカントリースキー選手においてストレングストレーニングが及ぼす筋質量とパフォーマンスへの影響』

今回筆者が参照したのはこちらの論文です。

18歳から27歳までのクロスカントリースキー選手19人を、通常のエンドゥランストレーニングに加えて週に2回のストレングストレーニングを行う群9人(STR)行わない群10人(CON)に分けて12週間、トレーニングを行いました。

結果、どちらの群でも競技におけるパフォーマンスの向上が認められましたが、STR群の方がパフォーマンスの向上幅や、向上が認められた項目数が多く、さらに興味深いことに、STR群においても徐脂肪体重(筋肉量の目安)の有意な増加は認められませんでした。

結論として、ストレングストレーニングは、筋肉量をさほど増加させずとも筋力を向上させるほか、最大酸素摂取量も増加させるとしています。

なぜ筋トレは筋肉量を増やさなくてもパフォーマンスを向上させるのか?

冒頭で紹介した記事をツイッターで告知した際に、読者の方からこんなご質問をいただきました。

筋力は筋肉の断面積に比例し、筋断面積は各筋繊維の数ではなく、断面積に比例するらしいので、普通に考えれば筋力が増えれば重量が増える気がしますが、同時にどこかで減らしているってことでしょうか?

まさしく筆者も同意見で、筋肉量や筋断面積が増えないのに、筋力やパフォーマンスが向上するのはおかしな話です。

しかし実際の実験結果は異なっていました。

筆者はこのメカニズムについて、2つほど仮説を立ててみました。

仮説①: 筋トレで競技に必要な各部位の筋肉量を最適化する

まず一つ目は、「必要なところに必要なだけの筋肉をつける」という考え方です。

ご紹介した論文中で、「筋肉量には有意な差が見られなかった」と記述がありますが、結果を詳しく見ていくと、各部位ごとに細かい筋肉量の変動があった結果、全身の筋肉量に有意な変化がなかったということみたいです。

https://www.researchgate.net/publication/41411373_The_effect_of_heavy_strength_training_on_muscle_mass_and_physical_performance_in_elite_cross_country_skiers

この表で有意な変化があった点をまとめると、

  • CON, STRともに上腕三頭筋の筋断面積が増加した。STRの方が増加幅が大きかった。
  • 徐脂肪体重はCONで増加したが、STRでは有意な変化がなかった。
  • 徐脂肪体重の変化を詳しく見ると、下肢の徐脂肪体重でCONに増加が見られ、STRと比べても有意な差が見られた。体幹部の徐脂肪体重でSTRに増加が見られた。

STRで下肢の徐脂肪体重が増加せず(むしろ減少)、体幹部で増加したのは興味深いことです。この実験で行ったトレーニングは以下で、体幹部を直接鍛えるトレーニングは行っていなかったのにも関わらず、筋肉量が増加したのです。

有意な差ではありませんでしたが、STR群で下肢の徐脂肪体重が減った点も興味深いです。

これらの結果から、「筋トレを正しい方法で行うことで、身体の使い方が最適化されて各部の筋量が補正され、競技で使うのに必要な筋肉を効果的に鍛えることができた」という仮説が立てられます。

仮説②: 神経系のトレーニングにより筋量と関係なく筋力が向上する

仮説①で、「筋トレを正しい方法で行う」述べましたが、仮説②においてもこれが大事で、

「筋トレを正しい方法で行うと、神経系のトレーニングになる」

と筆者は考えています。

本書のプログラムは、(中略)筋力の最大値に到達するまでの速さを高めることを最大の目標としています。

『サイクリストのためのストレングスとコンディショニング』.p23.

冒頭でご紹介した文献にも上の記載があります。

筋トレによって、筋肉量が増えなくても、神経系が鍛えられることで、収縮させる筋と脱力する筋を身体が覚えたりすることで、一つの動作を効率的に行えるようになり、動作のエコノミーが向上することはあると筆者は考えています。

動作のエコノミーが向上すれば、同負荷でも筋力に余裕が生まれるので、最大筋力(1RM)が向上する可能性があるわけです。

スポンサーリンク

8/19追記

この記事に関してPeaks Coaching Groupの南部博昭コーチが、ご自身のブログで記事を書いて補足してくださいました。

まず、筋量の変化を測定する手法として用いたDEXAについて誤差の多い測定方法であると追記してくださっています。

これについては筆者は知らなかったので勉強になりました。

これを踏まえると仮説①はあまり説得力のないものになりますので、仮説②の方が有力です。

そして、

レースが続くシーズン中に新しく筋トレを導入するのは余りお勧めできず、Repeated Bout Effectの効果を十分獲得できるだけの時間的余裕のあるオフの時期にスタートし、負荷に十分体を慣らしてからシーズン中は維持に努めるのが適切ではないかと考えております。

http://hiroakinanbu.com/?p=1260

との記述がありますが、筆者も完全に同意致します。筋トレに伴う筋肉痛は少なくとも競技練習でのパフォーマンスに悪影響を与えるので、シーズン中に初めて筋トレをされる場合、慎重に行うのが良いです。

まとめ: 筋トレはパフォーマンスを向上させる。正しく筋トレを行おう。

メカニズムについては仮説の域を出ないものの、論文に記載された結果というのは覆りません。

筋トレは筋力だけでなく、エンドゥランストレーニングと組み合わせることで、VO2maxの向上を加速させるなど、有酸素運動能力にもプラスに働きます。

体重が増えることを思案して躊躇している方も、筋量を大きく変化させずに筋力を向上させた実験結果があれば、多少安心して取り組むことができるはずです。

というわけで、筆者はロードバイクトレーニングに筋トレを組み合わせることをおすすめします。ただし、新たに導入するのはシーズンオフの期間中が良いでしょう。

筋トレの正しいやり方については、筆者が現在熟読している本『サイクリストのためのストレングスとコンディショニング』に従うのがお勧めです(忖度はありません…) 。

下記の記事も併せてご覧いただくと、理解が深まります。

それではまた!

コメント

タイトルとURLをコピーしました